始まり3
ある朝。
呆然とした旦那が
「何をしたらいいのかわからない」と呟いたまま、ソファーから立てなくなった。
今日は会議。
昨日資料を作成していたが、全体資料しか作っていなかったらしい。
自分の部の資料を作成する事を忘れていたのだ。
わたしは、頭が真っ白になった。
「今日は、取り敢えず休もう」と、言った。
旦那は見開いた目を真っ赤にして、
「ダメだよ。今日行かなかったら、一生仕事に行けなくなる。」と。
「わかった。今から○○長に電話をして、事情を説明しよう。」
無言で2人、地下鉄に乗り込む。
つり革を、震えて握ることができなかった。
会議前に、わたしも同席をして会社の応接室で話をする事になった。
そして、最近の状態を説明した。
どうもおかしいと思っていた・・・と、○○長は言った。
わたしは、説明しながら、自分の不安がもしかしたら当たっているかもしれないと感じた。
「物忘れ外来に連れていきます。」
○○長は、驚いてわたしを見た。
「環境が変わった事での鬱状態じゃなくて?少し休んで休養を取れば・・・」
「いえ、物忘れ外来です。」
旦那の異変は、鬱状態とは思えなかった。いろんな情報をかき集める度に、ひとつの病気が浮かんで消えない。
・・・若年性認知症。